irisuinwl’s diary

サークル不思議(略)入巣次元の、数学や技術的なことを書きます。

「世界標準の経営理論」が良い

はじめに

めっちゃ売れてる「世界標準の経営理論」を購入しました。

自分も社会人の端くれ、企業に所属している以上はビジネス書などはつまみ食いします。(ドラッカーコトラー、大学4年間の○○が10時間でわかるシリーズなど)

自分は、売れているビジネス書というと、分かりやすいように書かれている反面、耳障りのいい言葉を言っていて内容が浅いのでは? という勝手に思っており、敬遠している逆張りのオタクなんですが、この本はとても面白いです。

ひとまず経済学ディシプリン経営理論(経済学分野から派生した経営理論)の2部までよみました。

この記事では、自分がこの本は面白いと判断した、序章について語りたいと思います。

とりあえず迷っている人は序章を読むといい

この本は以前書店で立ち読みしてたのですが、序章にこの本のコンセプトすべてが詰まっています。面白いです。

序章では、経営学の概観と理論の重要性を説き、本書では理論志向であることを言っております。

自分は理学系だったので、このコンセプトを明らかにするだけでも支持できました。

理由は三つ上げておりますが、その一つを紹介します。

世の中の経営学のアプローチの仕方として、理論実践(書では現象といっている)の二つに別れます。

この本では、理論とは以下のようにとらえております。

「『何が』(what)を上述するものではなく、『どのように』(how)『いつ』(when)『なぜ』(why)に応えることである」

理論によって、経営学の現象の因果関係(how)、前提条件(when)、そして原理の説明性(why)を与えることを理論ととらえてます。

一方、MBA本や所謂ビジネス書では、実践の内容が多く、フレームワークの紹介に重きをおいたものが多いです。(これは経営学が取り扱うドメインが世の中で多く応用されており、社会としても応用すること(ビジネス価値につなげること)を要請しているためだと考えられます)

著者は、この立場を批判し、理論の土台から現象・フレームワークを導出することの方が、

  • 理論によって経営分野の見通しが良くなることと、
  • フレームワークにない現象でも理論をベースに実践を構築できること

という点で有益であることと説いております。

自分は、情報科学の理学系大学からエンジニアになって、応用を支える理論の重要性を再認識したので、この考えはとても支持できました。

また、実際の組織で働いていると実践偏重で前提条件や因果を意識せず、上手くいかないケースを多く見ます。

  • 巷で有名なビジネス書が紹介しているフレームワークを組織の適正等を考えずに実践し、既存の組織運営を破壊してメンバーは疲弊、組織に対する不信へ繋がる。
  • 組織フレームワークだけでなく、例えば、最近特定の開発手法(たとえばアジャイル開発から派生した新しい手法など)が流行っているという理由で、真似をしてみたが、従来のプロセスに無理やり新しいプロセスを組み込んで破綻、何故か組織でその手法は使えないという認識になり、アンチ派閥ができる。
    (本当に驚愕するのですが、自分が上手く使えなかったからと言って、結果を出している手法を批判する事例が多いです。)

また、この本は、経営学が経済学・心理学・社会学の三つの理論基盤から作られていることを説明し、それぞれの分野から発展した理論について解説しております。

世の中にあふれる情報として、経営学は恰も独立した分野でそこから導出されたフレームワークを説明しているなか、それぞれの分野が関係しあい、俯瞰しているのはありがたいです。

これはドラッカーが、The Practice of Managementでも

マネジメントたるものは、心理学、哲学、倫理学、経済学、歴史など、人文科学、社会科学、自然科学の広い分野にわたる知識と洞察をみにつけなければならない。

と言っていることとも合致しており、自分もその通りだと感じました。

このように経営学を俯瞰し、理論の重要性を説き、分かりやすさを配慮した書物が出てくることは、社会人1年目やこれから経営学を学ぼうとする学生にとってよい知識リソースになると感じました。

また、経営学の発展にも大きく寄与するんじゃないかと思います。

気になる点

800ページの大著ですが、理論をかなり掻い摘んで説明しており読みやすいです。

しかし、理論の詳細やフレームワークに落とし込むことは少ないので、実践した事例などの参考書を当たる必要があるように思います。

実証実験や原著論文の参考文献は明示してあるので、それを含めて読むことで、実用や理論の詳細に関しては補足できるんじゃないかとは思います。

あと、計算する箇所がありますが、計算ミスがあったりします。ゲーム理論の章で10P=30C => P = 1/3 CなのにP=10Cで式展開してたり。

また、理数系としては、数学をツールとしてもっと使って欲しいなと思いました。もっと軽率に微分して欲しい。

数学を使ってモデリングした経営学の本書いたらニッチな人気は出そうな気がする。でも、それって数理経済学では(言い過ぎ炎上不可避)